法人・個人の納税者が適正に納税しているかどうかを調査する「税務調査」。
調査の存在は知っていても、どんなことを調べるものなのか、詳しく知っている人はあまり多くないようです。
この記事では、税務調査とは何をするのか、企業はどのような準備をしておけばいいのかについてわかりやすくまとめました。
あらかじめ税務調査の概要を知っておけば、いざというときも落ち着いて対応することができます。ぜひ参考にしてください。
1.税務調査とは
税務調査とは、税務署に提出された申告内容が正しいかどうかを帳簿書類で確認し、誤りがないかどうか税務署が調査することを言います。
調査で見られる書類としては、決算書、帳簿、納品書、領収書、請求書、契約書、稟議書などが挙げられます。
調査の対象は全ての企業と、個人事業主、副業している会社員などです。通常は5年〜10年に1度ほどの割合で調査が入ることが多いと言われています。
2.税務調査の種類
税務調査には大きく2種類あります。
ほとんどのケースが任意調査ですが、不正が疑われる企業の場合は強制調査の場合もあります。
(1)任意調査
一般的に税務調査というとこちらを指します。
おおよそ10年に一度のサイクルで行なわれ、事前に調査する旨電話連絡が入ります。
調査は1〜3日ほどかけておこなわれます。
「任意」という名前ですが、税務調査は受忍義務があるため拒否することはできません。
仮に拒否したり帳簿を見せなかったりすると、罰則がありますのでご注意ください。
(2)強制調査(犯則調査)
税務署職員ではなく国税局査察部(いわゆる「マルサ」です)によって事前連絡なく強制的におこなわれるのがこちら。
事前通知によって隠蔽工作がなされることを防ぐために突然訪問することになっています。
巨額脱税などの立件を目的とした犯罪捜査です。
3.税務調査がくる時期
(1)多いのは4〜5月、7~11月
税務調査がいつ実施されているのか、明確に決まった時期はありませんが、確定申告時期が落ち着いた4〜5月と、国税局や税務署の人事異動が落ち着いた7〜11月頃に行なわれることが多いようです。
企業の決算月によっても調査がくる時期は変わります。
決算が2〜5月の会社は、7〜12月に、決算が6〜1月の会社は、1〜6月に調査がおこなわれるのが一般的です。
(2)事前連絡は約10日前にくる
任意調査は、調査を受ける企業が余裕を持って準備できるよう、企業と顧問税理士宛に、10日ほど前に電話で事前連絡が入ります。
調査日時や場所、対象税目、課税期間などを知らされますが、日程に不都合があれば調整してもらうことができます。
4.税務調査の対象になりやすい企業
多くの会社はおよそ10年に1度調査を受けることになりますが、中にはもっと短いスパンで税務調査を受ける企業があります。
税務調査の対象になりやすいのは以下のような企業です。
- 短期間で業績の変動が大きい
- 開業後3年以上経過している
- 不正が多い業種に属する
- 同業他社に比べ利益率が極端に低い
- 過去に不正があった
- 不正があった会社と取引があった
利益が大幅に増えたり、急成長を遂げた会社は納税額が大きくなり、税務署にとっても目立つ存在となります。
大幅に経営が悪化したり、過去に不正があった企業についても、調査の対象となりやすくなります。
5.税務調査の流れ
(1)事前連絡
約10日前に、企業と顧問税理士に、税務調査を実施する日時や場所、調査対象税目、調査対象税目などについての電話連絡があります。
(2)対象期間分の書類を用意する
経理部門は対象期間の対象税目の資料を事前に準備します。
倉庫等にしまっている場合は、取り寄せて調査場所に用意する必要があります。
顧問税理士とも事前に打ち合わせをしておくと安心です。
(3)税務調査の実施
税務調査は1〜3日間かけておこなわれるパターンが一般的です。
はじめは事業の概要などについて経営者へヒアリングが行なわれ、その後に調査が開始されます。
調査では、職員からの質問に回答したり、書類の提出を求められたりします。
聞かれたことには余計なことは付け足さず簡潔に答えること、調査がスムーズに進行できるよう丁寧に対応することが重要です。
質問に虚偽の回答をしたり、求められた書類の提出に応じず調査を妨害したりすると罰金や懲役刑になる場合もありますので注意してください。
(4)調査結果の通知
調査実施後1ヶ月程度で、結果の連絡があります。
元々の申告内容に誤りがないとわかれば「申告是認」として特に対応は必要ありません。
「更正又は決定すべきと認められない旨の通知書」という書類が届きます。
もし誤りがあった場合は税務署から指摘事項を受けることになります。
指摘内容について認める場合は「修正申告」の手続きを納税者でおこないます。
修正申告は税務調査の場面以外でも、納税者自ら申告後に誤りを見つけた場合などにもおこなうことができます。
6.税務調査の準備は何が必要?
(1)税務調査で必要な書類
- 会社のパンフレット・組織図・職務分担表
- タイムカード・勤怠管理表
- 経理規定
- 預金通帳
- 見積書・納品書
- 販売契約書
- 領収書(振込支払いの控え)
- 請求書
- 契約書
- 総勘定元帳
- 稟議書
- 議事録
- 補助元帳
- 現金預金出納帳
- 賃金台帳・年末調整書類
- 棚卸明細表
- 賃貸借契約書
(2)税務調査で見られやすい科目
税務調査では何が見られやすいのか、箇条書きでまとめました。
調査の連絡が来てから慌てないように、日頃から以下のことを意識しておきましょう。
・売上
計上漏れや計上時期の誤りが内科を特にチェックされます。また、現預金の動きから売上の過少申告がないか、今期の売上を翌期以降に計上していないかも重視される部分です。
・仕入
架空の取引を仕入れとして記載していないか、翌期の仕入れを今期に計上していないかなどがチェックされます。
・人件費
架空の人件費が計上されていないか、従業員が存在するかなどの他、役員報酬や退職金が多すぎないかなどもチェックされます。
・交際費
交際費に入れるべき取引が他の科目で処理されていないか、事業と無関係の支出が計上されていないかなどをチェックされます。
普段の会計業務をきちんとおこなうために
ここまで、税務調査について基本的な情報をお伝えしました。
読んでいただいてわかるように、普段の会計業務を不備なくおこなっていれば、調査の準備にそこまで苦労することはありません。
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